ダメ親父の大切な人!

結局、娘に50万円を送ってしまった。全くどうしようもない親父である。娘も娘で何度、これが最後と言わせるのだろう。しかし、こうなってしまった理由というか言い訳は勿論ある。彼女が生まれてまもなく、親の都合で離婚したので自分は彼女とは生活を共にしていない。申し訳ないという思いも強くあって、ただただ甘い親父になってしまった。元妻が養育費だけでなく親父からこずかいも貰って来いとけしかけていた節もあって、特に30代後半は本当に生活が苦しく、爪に火を灯してという生活の中でも、娘には貧しい思いだけはさせまいと必死になって働いていた。こんな自分を見るに見かねて手を差し伸べてくれた会社の先輩Sさんには本当に感謝しており、彼がいなかったら自分は潰れていたと思う。だからこそ出稼ぎに出て間もなく、このイスタンブールに招待し、先輩が希望したカッパドキアにも案内したのだ。愚痴を聞いてくれ、飲み屋代も全て払ってくれていたのだ。会社関係で頭が上がらないのは、彼だけだ。後は役職の違いで、組織のルールに則ってやって来たが、別に相手が人間として偉いと思った事はない。逆に人間としてはどうなのかという幹部も少なからずいた。こういう生活の中、48歳で海外子会社の社長になってようやっと生活にも余裕を持てるようになった。年収が2千万円を超えると養育費を毎月支払っても何とかなるようになる。贅沢は出来なかったが、暮らせるようにはなった。娘の大学卒業と共に養育費がなくなり、余裕も出来、定年前に元妻に渡したマンションの残債も一括返済出来た。今は借金はないが、会社の持株会と退職金を回した企業年金やグループ保険会社の個人年金といった老後に向けた金融資産はあるが、手元の現金は心許ないので出稼ぎをしているわけだ。少し現金が出来ると計ったように娘から金を送れと言ってくる。そして送ってしまう。これは娘を捨てたという自分の消せない過去の為であり、どうしようもないのだ。一方で、今この地で自分の目の前に現れた彼女は、娘と同じような年なのに完全に自立しているし、甘えて欲しいのだが、そんな感じは微塵も見せない。これだけ年が離れているのに男と女、全く対等である。逆に大きな母性で自分を包み込んでくれている。こんな女性は初めてで、彼女にメロメロになっているというか、むしろ自分が甘えているようだ。65歳以降の生活の足しにする為の預金をする為に出稼ぎに来たが、この地に一生留まりたくなっている。その為には、介護老人に成らないように健康に留意し、更にこの地で仕事を見つけ、死ぬ準備が出来るかが、自分の残りの人生における大きな課題である。今、酒を極力飲まないようにしているのも、その為なのだ。自分の人生で大切な人と言えば彼女しかいない。

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