言ってはいけないこと。

橘玲さんの本ではないが、言ってはいけないことは確かにある。決して言ってはならないことは、死ぬまで言わないことだ。自他主義などと言っても人は自分だけが可愛いものなのだ。従い、本音など誰に対しても決して言えるものではない。ここで話は横道にそれるが、夜の街での恋愛においても、彼女が、自分だけのおもちゃである時の天にも昇るような心地も、意思を持った人として自分の前に現れた途端に夢から覚め、現実に立ち戻ると、お互いのエゴがぶつかり合うようになり、時間が経つにつれ、ズレも大きくなり、お互いがエゴを抑えるか、消さない限り、破綻することになる。結婚の為にどちらかが一方的にエゴを消す事があるのかもしれないが、それが出来ない人も多いと思う。今は日本から遠く離れた外地に一人、働いている。思えばいつも彼女が意思を持つ度に追い詰められて、海外に駐在して逃げてきた。逃げ場がないなら、年貢を納めるしかないが、常に逃げ場を確保した恋愛劇を演じてきたようなものだ。さて、今回もしがらみから逃れて、今彼女のいない世界にいるのが、この上もなく自由な気分である。本当に自分は最低で情け無い人間だが、自分はもはや変わりようがないので受け入れざるを得ない。この地では自分のアパート内でさえ誰も知らないし、アパートの住人も自分の事は誰も知らないだろう。自分を名前付きで認識しているのは、管理人だけである。それにしても、東出さんの気持ちは良くわかる、家など帰りたくなかったろうし、若い子との情事も楽しかっただろう。ただ代償は大きい、逃げ場のない彼は、子供が成人するまで養育費を支払う為に働かなければならない。世間からのバッシングを全身で浴びながら大根役者がやって行けるのか、華やかな世界にいると本当に大変である。自分もいろいろあったが、養育費は払い切ったし、広い銀座の片隅で綺麗で気の利くホステスさんと静かに時間を共有して一瞬を楽しんで来た、そして偶には間違いもあり、どうにもならなくなると逃げ出して来たわけだが、人知れず目立たぬようにやって来た。この世の中、目立たないことが肝要である。

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