下級国民は下請け業者

毎朝ホテルに迎えの車が来る、BMWの7シリーズの総革張りの高級車である。日本では眠い目をこすりながら、早起きをして6時には家を出て地下鉄に座って行くのを楽しみにしているという非正規の庶民なのにだ。年をとり、海外に四六時中いても別に今更家族と離れて淋しいとかは感じないし、彼女に会いたいと狂おしくなることもないので仕事は何でも引き受ける。銀座で飲めなくともお金が貯まるだけなので助かるし、娘にたかられることもない。良いこと尽くめなのである。発展途上国でテロの危険があるところには皆出張に出たがらないので非正規の自分に仕事が回ってくる、また安全対策上、高級ホテルに泊まるので快適な時間を過ごすことができる。まあ突然スリランカのようなことが起こるので、後は運であり、寿命と考えるしかない。ただ駐在ではないのでいくら頑張っても、危険地手当はないし、特別休暇も付かない。非正規はまあ簡単に言えば所謂下請けのようなもので給料が現役の半分で現役がやるより結果が出るとなれば会社としては定年後の非正規を使い倒すということになる。まあ出張は良い面もあるが、納得いかない思いにも襲われることも間々あり、枯れることが大事で自分は定年し非正規に転落した下級国民なのだから、甘んじてこの境遇を受け入れるしかないと心を強く持たなければならない。天下りを楽しむ上級国民と違い、下級国民としては仕事があり、少しでも贅沢な気分を味わえるなら、喜ばなければならないのかもしれない。しかし、明らかに差別というか、待遇に格差があるのだが、平等などということはあり得ないので、自分の階層の中で出来る暮らしを作っていくしかない。仕事がある間は働くつもりである。

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