シャトーヌザンとウマールベイ

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上級国民、下流老人、富裕層、貧困層と社会の分断をあげつらって楽しんでいるウェブライターやジャーナリストと称する輩がやたら多い。読んでいると自分も暗くなるが、といって一人ホテルの部屋にいると、ついスマホを手に取ってしまうので当地の駐在員と今週末はワインツアーに出ることにした。春の陽気で晴れて心地よく菜の花が黄色絨毯のように広大な大地に広がっているさまは圧巻であり、それだけでもホテルを出てきた甲斐があったという感じである。街から車で二時間半、畑の向こうに建物が見えてくる、シャトーヌザンというファミリー経営の小さなワインの作り手である。ほとんど地元で消費され、国内でも何軒かのレストランに卸しているだけだそうな。基本フランスの葡萄だが、ジンファンデルも少々生産しているそうである。カベルネソーヴィニヨンの2012年からテイスティングを始めた。小さなシャトーだが、なかなかいける。2009年葡萄の収穫時に嵐で多くの葡萄を失い途方に暮れたそうだが、えい残った葡萄でワインにしてみようとなんとカベルネソーヴィニヨン、メルロー、シラー、ピノノアールというブレンド酒が生まれ、未だにブレンド比率は毎年試行錯誤をしているそうだ、シャトーヌザンのプレスティーズワインに育てて行きたいと新興の作り手だが、その心意気や良しである。シャトーの庭で今はまだ裸のワインの木を眺めながら2009年のブレンド酒を頂いた、至福の時である。ワイン好きには堪らない瞬間だ。仕事で出張中でも、たまにはこういう楽しみがあっても良いだろう。庶民でも楽しみがあっていい。テイスティングは後、さらに車を走らせ、ソーヴィニヨンブロンが美味いという、これまた新興のシャトーウマールベイに向かった、気のいい親父さんというウマール爺さんだが、アメリカの大学に留学しエンジニアとしてアメリカで働いていた時にお父さんが急逝されたそうで地元の農園を継いだそうだ。ただ作るのはワインだと代々の農業は捨て一からワイン作りに挑んで20有余年間、立派なソーヴィニヨンブロンを生み出した。テイスティングの後、このワインを卸している海辺のレストランがあるというので、さらに車を走らせた。取れたての魚にワイン、前菜の小エビも最高級だった。小さく刻んだニンニクとオリーブオイルで炒めただけの料理だが、堪らなく美味い。それにウマール爺さんのソーヴィニヨンブロン、ああ幸せを感じるというのはまさにこういう瞬間である。まあたまにはこういうことがあるので、海外畑のサラリーマンの良いところというか役得なのだろう。今は安月給だが、まあやってられられるのだと思う。金ではない楽しみもあるのが人生なのだ、自分はこれで良いとつくづく思う。
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